寿楽園

社会福祉法人寿楽園は佐賀県基山町に1952年の設立以来、時代のニーズに対応した福祉サービスを提供してきた。設立60周年の2012年を迎えるにあたり、医療福祉地区として開発され、居住空間としての快適性と医療アクセスの利便性に優れた隣町の鳥栖市弥生が丘に、特別養護老人ホーム80床、短期入所サービス20床の計100床を全個室ユニット型の入所施設として移転新築することとなった。

■1フロア2ユニットのコンパクトな平面計画
ナイトシフトも考慮し、1ユニット10人×2ユニットをひとつの介護単位として1フロアにまとめること、最も環境が良い位置に共同生活室である食堂を配置すること、厨房は同法人が運営する他の福祉施設も併せたセンター厨房(クックチル方式)とすることが計画の条件であった。
これらの課題に対し、2階から6階の居室フロアは、西面と東面に居室、南面に食堂やリビングを配置、またコア部分は縦動線と2ユニット共用のスタッフステーションとすることで、1フロアあたり2ユニットの明快で効率的な平面計画とした。ユニット内には談話コーナーを分散して配置し、住宅に近いスケールの空間とすることで「住まい」を感じられるよう配慮した。
各ユニットの食堂・リビングは居室群の中央に配置するとともに、2ユニット一体でも広く使用できる配置としたが、厚労省H23年12月付Q&Aにより食堂はユニット間の区分が必要となったため、障子の間仕切を設置した。

■こまやかに配慮した居室計画
1年半の設計の間、現場スタッフとともに、あらゆる課題・要望に対し一つ一つ検証を重ねることで、施設として必要なものを最適な形で整備して行くことを心がけた。
居室内の個室トイレにはそれぞれ洗面台を設けた。車椅子でも容易に使用できるだけでなく、介護度が高い入居者に対しては、トイレを汚物処理室として使用し、それぞれの居室内で処理を完結させることで、衛生区画を明確化した。
内法13.2平米の居室には、個人私物を全て収納できる3種類の家具を準備した。これらの家具をベッドと同じ壁側に配置することで、十分な介護スペースを確保するとともに、緊急搬送時のベッド取り回しも容易としている。
居室の入口はガラス窓のある小扉付引戸とすることで、廊下から、また室内から様子が覗えることで、見守りと居住者の安心につながっている。また入口上部の欄間窓は開閉式とすることで換気窓としても機能させた他、屋内階段の最上階にバランス式逆流防止窓を設け、階段室を使った自然換気を可能とした。

■竣工1年後の評価
竣工から1年が経過し、日中は多くの入居者が、居室から共同生活室に出てきて、テレビを見ながら談話したり、景色を眺めたりと思い思いの時間を過ごしている。
中間期には居室の欄間を開けると、階段室へ空気が流れフロア全体に風が感じられるとスタッフに好評を得ている。
また居室内においては、適切な家具配置により、十分な介護スペースができているほか、2人掛けのテーブルをセットすることで家族3人での食事ができるなど、ゆとりある豊かな居室として機能している。
個人の好みやその日の体調に応じた食事提供を家庭的な方法で行うために、ご飯と汁物は各階のユニット内で調理するというこだわりに対し、各食堂には大きなアイランドキッチンを設けた。キッチンで盛り付けられる主菜とあわせ、入居者一人一人への家庭的な雰囲気での提供が実現している。

建築主

社会福祉法人 寿楽園

用途

特別養護老人ホーム80床
短期入所サービス20床

所 在 地

佐賀県鳥栖市弥生が丘

竣  工

2013年1月

延床面積

5,692㎡

備考

実施設計・監理

構造規模

鉄筋コンクリート造 地上6階